でもグレイスが『お転婆』をしたのは一度や二度ではない。途中で捕まってしまった幼い頃をカウントすれば、一体何回あるか。あまり良くはないことだが、メイドたちも「またか」という反応であった。
 グレイスの気持ちも少しは察してくれているのだと思う。
 男爵家のお嬢様として、自由に遊びに行くこともできない身。生まれたときからそういうものだとはいえ、息が詰まることもあるだろうと。
 おまけに婚約に関する、連日のこれである。許してくれるはずはないが、「仕方ない」とは思われているらしい。
 もっとも、今回ほど危険な目に遭ったと知れば、「もうなさらないでください」と泣かれたかもしれないが。
 心配をかけてしまった。グレイスは改めて反省した。
 体も髪も綺麗にされて、浴槽で少しお湯に浸かって。普段通りの服を着せられた。
 キナリ色のお気に入りのワンピース。普段の自分の格好。
 特になにも思っていなかった、いや、かわいらしくて好きだと思っていたのに、あの服のあとではちょっと窮屈な気持ちが浮かんでくる。そんなことを言える立場ではないのだが。
 さて、このあとは叱責が待っている。父から直々のお叱りだ。
 メイドに付き添われて、グレイスは憂鬱な気持ちで父の部屋へ向かったのだった。