久しぶりにこれを使うことを考えて、グレイスはどきどきしてきた。
 こんなこと、良くないことだ。そんなことわかりきっている。
 けれど、使いたくなってしまった。ここのところ、息が詰まることばかりであったから。
 来週は外出許可が出ていて、フレンとお出掛けができる。それも楽しみだったけれど、待ちきれなくなってしまったのだ。
 中身を元通り箱に戻して、クローゼットの元の場所に入れて、グレイスは改めてベッドに潜り込んだ。
 『それ』をいつにしようかと考える。ひとの目につかない日や時間がいいに決まっている。
 そう、父が外出中とか……仕事が忙しくてこもっているとか……。
 プラスして、フレンにも用事がある日でなければいけない。頭の中に自分の予定を思い描いて、今度フレンの用事もこっそり情報取得しなければ、と思う。
 グレイスはなんだかわくわくしてきてしまった。良くないことを企んでいるというのに。元々、自分には合っていなかったのだ、と思う。どうにもならないことをうじうじ思い悩んでしまうなんて。
 だから、これはグレイスが自分らしく羽を伸ばせるためのこと。
 計画を立てているだけで、ちょっとの罪悪感はあれど、久しぶりに胸躍るようなことだった。