「こんばんは、グレイス。今日はおめでとう」
 そこへ次のお客様がやってきた。ぱっとグレイスの顔は輝く。
「ありがとうございます! おばあさま!」
 それはグレイスの祖母。白髪になった髪をアップにし、ワインレッドの落ちついた色味のドレスを身に着けた美しい姿だった。
「まぁまぁ、とても綺麗ねぇ」
 グレイスの姿をよく見て、祖母のレイアは笑みを浮かべて褒めてくれる。グレイスはそれだけでも嬉しかったのに、次の言葉にはもっと嬉しくなってしまった。
「それにドレスだけではないわ。良い淑女になったものね」
 祖母だけあって、幼い頃から知られているに決まっている。昔はこの屋敷で一緒に暮らしていたし。
「ありがとうございます」
 嬉しくなったけれど、ちょっとはにかんでしまった。くすぐったさもあったのだ。
「また私のところへ遊びに来てちょうだい。いつでも歓迎するわ」
「はい! お邪魔いたします」
 マリーと同じように、レイアの屋敷へも割合頻繁に訪ねている。レイアの屋敷ではいつもグレイスの好きな料理やスイーツを出してくれるし、心許せる優しい祖母であるレイアと過ごす時間はいつも心地良かった。
「ではね。良い晩を」
 レイアはそれで去っていった。グレイスは小さくお辞儀をしてそれを見送る。
「おめでとう、グレイス」
 次にやってきたのは伯父であった。今は亡き、母の兄である。