「では、今夜、私から正式に発表ということで」
 それで話は済んだ。グレイスは一番に「では、失礼いたします」と深々と礼をして退室した。使用人の開けてくれた扉から廊下に出ても気は抜かなかった。
 まだ見られているかもしれないではないか。ダージルにだけではない。ダージルの連れてきた使用人がどこに居るかわからない。きっとたくさん連れてこられただろうから。
 使用人といえど客分なのだから大切にもてなされているのだろうけれど、一人で歩いてらっしゃらないとは限らない。グレイスは思った。
 つまり、誕生日パーティーが終わるまでは気を抜かずに過ごさねばならないということだ。
 しかしそこへ、グレイスにとっての安らぎと喜びがやってきた。
「お疲れ様でした、お嬢様」
「フレン!」
 グレイスの顔がぱっと輝く。近付いてきてくれたのはフレンだったのだから。
 待機していてくれたのだろう。それは単に従者として当たり前のことだろうに、気疲れしたところであったのでとても嬉しく思ってしまった。