「貴女のお世話をする役目も、お茶を淹れる役目も、変わらないでいたいですね」
 グレイスを緩やかに抱いたままで、フレンは言った。
 その言葉にグレイスはふふっと笑ってしまう。
 変わらない。
 そう、なにも変わらない。
 フレンとの関係が変わっても、やりとりをする言葉はなにも変わらない。
「それは入り婿様として適切なのかしら」
 ちょっとからかうような響きになった。けれどフレンはすぐに言い切る。
「適切でしょうよ。だって、私は」
 フレンは再びグレイスの肩に触れた。そっと離される。
 しかし今度は瞳を見つめてくれるのではなく、すっと腰を落とした。グレイスの前にひざまずく。
 そしてグレイスの手に触れ、そっと自分の手に乗せ、包み込んで。
 グレイスはなにが起こるかそれだけでわかってしまった。
 幸せと、少しのおかしさが同時にやってきて、グレイスの顔を幸せな笑みで満たした。
「ずっとお嬢様のお傍にいるのですから」
 それは誓い。
 従者としてではない誓い。
 手の甲に落とされたやわらかなくちづけは、いつまでも変わらない愛を誓うためのもの。

 (完)