グレイスたちの一行が襲撃を受けてから数日後。
 ショックから屋敷に帰るなり寝込んだグレイスだったが、翌日には起きることができた。寝ている場合ではないし、それにこの事件の全貌を知りたかったのだ。
 父は無事だった。賊からいくつか傷を負わされたもの、そう重傷ではなく、医者によればひと月もあればすっかり回復するであろうという見立てだった。グレイスは心底ほっとした。
 けれど悲しいこともあった。護衛の何人かが怪我を負い、数名であるが亡くなってしまった者もいたのだ。
 グレイスは涙に暮れた。自分のために、命を落としてしまうなど。
 けれどフレンが慰めてくれた。「お嬢様がこれからお元気に生きていかれることが、一番の救いになるでしょう」と。
 そう、そのフレン。
 何事もなかったように、であるはずがないが、グレイスにあれからずっとついていてくれた。
 襲撃のこと、診察、後処理。することなどたくさんありすぎて、ゆっくり話す暇もなく、事務的な会話がほとんどだった。
 気になっているに決まっていたけれど、今は事の収束が優先。
 グレイスは何度も父や自警組織に呼ばれ、話をした。
 まだ情報も交錯しているようで、あの襲撃について詳しいことは突き止められていないようだった。
 ただ、賊たちの名乗りからするにオーランジュ家が関与している可能性は高そうであった。それが直接仕向けられたものか、どこぞから雇われたものなのか。それはアフレイド領の自警組織が調べを続けているところである。
 わかっているのはこのような事態になって、ダージルとの婚約続行及び結婚は高確率でなくなるのだろうということ。
 最悪の場合、仕向けてきたのはダージルかもしれないのだ。グレイスにとっては考えたくない出来事であったが。
 そのような忙しく慌ただしかった状況が落ちついたのは、一週間以上も経った頃のことであった。