グレイスがダージルに会いに行った頃。レイアの暮らす屋敷では色々とひとが出入りしていた。
 それも穏やかなお客ではない。ひとめを忍んでくるようなお客である。
 やましい理由ではないが、レイアの元へやってきて、そしていくらかの話をして、またこのあとのことを打ち合わせて帰っていく。
 レイアは毎日のようにそれを迎え、聞き、次の指示を出すのだった。
 執務がグレイスの父、レイシスの代に取って代わって、ある意味引退となったレイア。
 領主を務めていたのは夫であったが、もうとっくに亡くなっている。それでレイシスがあとを継いだのであるし。
 しかしレイアとて、領主の妻としてじゅうぶんな働きをしていたといえよう。そのことから引退という身分になったのだ。今は屋敷で僅かな使用人に囲まれて静かに暮らしていたところ。
 だがこの状況である。大切な孫が苦境に立たされてしまったのだ。黙って見ていることなどできはしない。
 できることなど限られている。領主の妻として領主を支えてきたとはいえ、この世ではまだ一段階身分が下の女性である身。どうしても仕方がない。
 けれど、若い頃から社交的な性格であり、また行動的であったレイアには、人脈という大きな武器があった。グレイスにはその行動力がお転婆という形で引き継がれたのだろうが、それはともかく。
 屋敷に出入りする人々は様々なものを持ってきた。もの、というか。形のあるものではないことが大半だったが。
 少しずつ。
 その『もの』たちの断片が集まってきて、まとまってくる。
 可能性が見えてきたとき、レイアは思わず目を細めていた。
 意外であったけれど、まったくありえないことではなかった。そういう、もの。
 もう少し。
 レイアは毎晩祈った。
 グレイスに、大切な孫に、幸せが訪れますように、と。