そういう方法だってあった。
 レイアのこと。信頼していないわけはなかったのだから。
 訪ねていって、相談でもしていれば、もしかしたらこんなことにもなってはいなかったかもしれない。今となってはやはり結果論であるが。
「グレイス。これからのこと、私に任せてくれないかしら」
 ふとレイアが言った。グレイスはレイアの顔を見上げる。視線が合った。
 グレイスと同じ、翠色の瞳が優しい色を帯びてグレイスを見つめている。
 その色に、グレイスはしばらく見入ってしまった。
 翠色。自分の持つ瞳の色であるだけでなく、あのとき、間近で見つめた色だ。
 フレンの持つ、グレイスを大切にしてくれる気持ちがたっぷり詰まった、優しい色。
 なんだかその色から思ってしまった。
 良い方向へいくのではないかと。
 上手くいくのではないかと。
 それはレイアの言葉もあったかもしれないけれど、予感、であった。
「おばあさま。……嬉しい、です」
 グレイスは笑った。涙のあとではまだ無理やりであったが、笑みを浮かべた。
 涙で顔が強張ってしまっていただけで、笑いたいと思ったのだ。作り笑顔ではない。
 笑みを浮かべるのは久しぶりだった。それで笑い方を忘れてしまっていたのかもしれない。
 グレイスの笑顔に、レイアの目が優しく緩む。グレイスの目元に触れ、軽く撫でてくれた。溜まっていた涙が再び拭われる。
「大丈夫。なにもかも上手くいくでしょう」
 レイアはそう言って、「また来るわね」と帰っていった。
 グレイスは玄関までお見送りに出た。
 必要な用事以外で、自分の意思で部屋の外に出るのも随分久しぶり、だった。