グレイスの肯定に、レイアは目元を緩ませた。
「小さい頃から傍にいたものね。ずっと一緒にいて、一緒に育ったようなもので。グレイスの一番傍にいたひとだもの。惹かれても不思議はないわ」
 優しい言葉は、グレイスの気持ちを受け入れ、寄り添ってくれるものだった。グレイスの胸がまた熱くなってしまう。
「……はい」
 出てきたのはそれだけだった。だが、それだけでもグレイスの心のことは通じてくれただろう。
「確かに、フレンが恋の相手というのはアフレイド家の人間としては適切でないかもしれないわ。でもね、大切なのはグレイスの気持ちよ。自分の気持ちに嘘をつき続けたら、遅かれ早かれ壊れてしまう。そうしたら、婚約を断るどころではなく、アフレイド家は駄目になってしまうの」
 きゅっと、グレイスの手が握られる。先程よりもっと、しっかりとぬくもりが伝わってくる。
「それに、それだけではないわ。グレイスは私の大切な孫ですもの。苦しい結婚なんて、させたくないの」
 ぐっと、グレイスの喉が鳴った。胸の熱さが喉まできたようだった。その熱いものは、ぽろっとグレイスの頬へ落ちてきた。
 レイアがもう片方の手を出す。グレイスの頬に触れて、それを拭ってくれた。
「気付くのが、そしてお話するのが遅くなってごめんなさいね。アイリスがもういないのだから、私が傍にいるべきだったのに」
 グレイスの母の名前が出てきた。もういない、母。
 レイアが離れて暮らしていたのは、きっと今回に限っては不運だったのだろう。そのせいでグレイスの気持ちに触れることが遅くなってしまったのだろうから。
 でもグレイスはレイアを責める気なんてちっとも起こらなかった。
「いえ、……私からも、お伺いすれば良かったのです」