屋敷の中がしんとしている、と感じたのは数日後のことであった。
 しんとしている、といっても静かなわけではない。常のように使用人が行き交い仕事をしている。
 けれどなんだか静かに感じてしまうのだ。味気ない、と言い換えてもいいかもしれない。
 グレイスは奇妙に思いつつも、半日を過ごした。勉強の日だったので朝、リリスに支度を整えてもらったあとは部屋で家庭教師についた。
 勉強も嫌いではないのでそれなりに真面目に取り組み、お昼の時間。
 しかしそこでおかしなことがあった。
「お嬢様、ランチのお支度ができました」
 グレイスの元へやってきたのは執事長だったのだから。グレイスは首をかしげた。休みでない限り、こういうとき呼びに来てくれるのはフレンに決まっている。
「今日、フレンはお休みだったかしら」
 フレンの休みの曜日ではないはずだけど。
 グレイスはフレンの休みの日を考える。今まで考えなくても頭に入っていたことなのに。
「ええ……少々、急用が入ったのだと。申し訳ございません」
 本当に休みのようだ。急用、ということは急遽、予定になかった休みを取ったということかもしれなかった。
 しかし執事長の言葉が妙に歯切れの悪かったのがグレイスに違和感を覚えさせた。それがなにかはわからなかったけれど。
「いいえ、……そう。ランチ、向かうわ」
 謝られたけれど、別に執事長は悪くないのだ。グレイスは単ににこっと笑い、彼についていってランチをとりに向かったのだった。