「大臣、こちらがバライカ王国沈没にかかる最終調査報告です。やはり急激な都市開発による地盤沈下が最大の要因でした」

「そうか。開発を手掛けた企業の八割が我が国の経済の主軸を担っている。このことは伏せておくように。移民は我が国が全て受け入れた。今後損害賠償などが起こらんように注意してくれたまえ。それから今後バライカ王国周辺の経済水域の問題も出てくるだろう。我が国が抑えられるように根回しを怠るな。
で、例の宇宙人の方はどうなった?」

「はい。そちらも順調です。宇宙船の開発援助を条件に移民を受け入れております」

「うむ。地球もいつ住めなくなるか分からんからな。情報漏洩に気をつけてくれたまえ」

「はい。失礼いたします」

男は癖なのか耳を掻きながら大臣室を出ていった。

宇宙人の移民受け入れは今に始まったことではない。

情報は秘され続けているが、宇宙船開発が失敗し続けているのもまた真実。

取引はフェアに行われるべきだ。そのためには切り札はとっておかなければいけない。

「宇宙は広いが価値のあるものは少ない」

男は独り言ちる。

この星ほど美しく貴重な星は宇宙広しと言えど、そうそうあるものじゃない。

失敗を繰り返さないためには、情報は有効に利用してこそ価値がある。





その後バライカ王国は二人の若き科学者たちの活躍により、海底王国として復興を遂げたとか、そうでないとか。

真相はまた別の機会に。