「条件付きではあるが、君の力になろう」
そんな言葉を引き出すことに成功した。
やったね。
「条件というのは?」
「しばらくの間、君を観察させてほしい」
「観察……ですか?」
思わぬ言葉に、ついついぽかんとしてしまう。
「私は教育実習生で、最近になってこの学院にやってきた。だから、君の人となりをまったく知らない。まずは、そこを確認させてほしい」
「なるほど」
私が潔白なのか。
それとも、悪評が流れて仕方ない人物なのか。
自分の目で見極めたい、ということか。
「わかりました、大丈夫です」
「即答か」
「なにもやましいことはありませんから」
「よろしい。ならば、交渉成立だ。これから……そうだな、一週間の間、君のことを観察させてもらおう。それと、積極的に君の情報も集めさせてもらう」
「はい、わかりました」
たぶんだけど……
ユーリは前言撤回を絶対にしない人で、やると言えばとことんやる人だろう。
だからこそ頼もしい。
観察をされている間は、非常に気まずく、大変だろうけど……
それを乗り越えれば、ユーリは私の味方になってくれる。
心強い。
ぜひ、今回の試練を乗り越えてユーリを味方にしよう。
「では」
私が手を差し出すと、ユーリは不思議そうな顔に。
「なんだね、これは?」
「ひとまず、これからよろしくお願いします、の握手です」
「まだ君の力になると決めたわけではないが?」
「わかっています。ただ、これから一週間、私を観察するのでしょう? まずはその間、よろしくしましょう、ということです」
「ふむ……まあ、問題はないか」
ユーリが私の手を取る。
「一週間、よろしく頼む」
こうして……
私とユーリの奇妙な一週間が始まった。
――――――――――
これから一週間、ユーリが私の人となりを確かめるため、観察をする。
ならば、いつも以上にがんばならければいけない。
人助けを積極的に行い、ボランティアに励んだり……
……なんていうことはしない。
ユーリは、普段のありのままの私を見たいはず。
それなのに、あからさまに点数稼ぎに走れば失望させてしまうだろう。
余計なことはしないでいい。
元々、なにもやましいところはないのだから、普段通りに過ごすことが一番だ。
と、いうわけで……
「フィー。今日はすぐに帰らず、図書室へ寄っていきませんか?」
「はい、アリー姉さま!」
いつも通りかわいい妹を愛でることにした。
本好きのフィーは、本を読むと周りが見えなくなるほど夢中になる。
じーっと本を見つめ、時折、登場人物の台詞を無意識に口にして……
うん、かわいい。
やっぱり、私の妹は天使だと思う。
そんな妹と過ごすことが私の日課だ。
いつものように図書室へ……
「クラウゼンさま」
「「はい?」」
呼びかけられて、私とフィーが同時に振り返る。
それもそうだ。
どちらもクラウゼンなのだから。
見知らぬ女子生徒が……いや。
よく見たらクラスメイトだった。
いつも本を読んでいるような、物静かな女の子だ。
言い訳になってしまうのだけど、そのせいで、すぐに思い出すことができなかった。
挨拶くらいしか言葉を交わしていないのも要因だ。
確か、名前は……
「こんにちは、ナナさん」
ナナ・シュトライゼール。
男爵家の令嬢で、一言で言うのなら子猫のような女の子だ。
とても愛らしく、かわいらしく。
見ているだけで和ませてくれる。
そんなクラスメイト。
「アリー姉さまのお友達だったんですね。はじめまして。私は、アリー姉さまの妹のシルフィーナといいます」
「シルフィーナさんですね、よろしくお願いします」
各々自己紹介をして……
それから、図書室は話をするような場所ではないので、中庭へ移動した。
中庭に設置されているベンチに座ると、ふんわりと、花壇から花の匂いが漂ってくる。
そのおかげで少し落ち着いたらしく、緊張していたナナは和らいだ表情に。
「あの……突然、すみません。クラウゼンさんにお願いしたいことがあって……」
「私に? えっと……その前に、フィーも一緒でいいでしょうか? できることなら妹に隠し事はしたくありませんし、それと、悩み事というのなら、この子の知恵が役に立つかもしれません」
「え、えと、私はそんなに大したことは……」
「大したことはありますよ。フィーのなにげない台詞で、色々とハッとさせられることがあるのですから」
「はぅ」
照れる妹、ものすごくかわいい。
語彙力が貧弱になってきた。
「はい、私は大丈夫ですよ」
「ありがとうございます、ナナさん。それで、お願いというのは?」
「お願いというか、相談というか……あの、クロムウェル先生のことなんです」
そんな言葉を引き出すことに成功した。
やったね。
「条件というのは?」
「しばらくの間、君を観察させてほしい」
「観察……ですか?」
思わぬ言葉に、ついついぽかんとしてしまう。
「私は教育実習生で、最近になってこの学院にやってきた。だから、君の人となりをまったく知らない。まずは、そこを確認させてほしい」
「なるほど」
私が潔白なのか。
それとも、悪評が流れて仕方ない人物なのか。
自分の目で見極めたい、ということか。
「わかりました、大丈夫です」
「即答か」
「なにもやましいことはありませんから」
「よろしい。ならば、交渉成立だ。これから……そうだな、一週間の間、君のことを観察させてもらおう。それと、積極的に君の情報も集めさせてもらう」
「はい、わかりました」
たぶんだけど……
ユーリは前言撤回を絶対にしない人で、やると言えばとことんやる人だろう。
だからこそ頼もしい。
観察をされている間は、非常に気まずく、大変だろうけど……
それを乗り越えれば、ユーリは私の味方になってくれる。
心強い。
ぜひ、今回の試練を乗り越えてユーリを味方にしよう。
「では」
私が手を差し出すと、ユーリは不思議そうな顔に。
「なんだね、これは?」
「ひとまず、これからよろしくお願いします、の握手です」
「まだ君の力になると決めたわけではないが?」
「わかっています。ただ、これから一週間、私を観察するのでしょう? まずはその間、よろしくしましょう、ということです」
「ふむ……まあ、問題はないか」
ユーリが私の手を取る。
「一週間、よろしく頼む」
こうして……
私とユーリの奇妙な一週間が始まった。
――――――――――
これから一週間、ユーリが私の人となりを確かめるため、観察をする。
ならば、いつも以上にがんばならければいけない。
人助けを積極的に行い、ボランティアに励んだり……
……なんていうことはしない。
ユーリは、普段のありのままの私を見たいはず。
それなのに、あからさまに点数稼ぎに走れば失望させてしまうだろう。
余計なことはしないでいい。
元々、なにもやましいところはないのだから、普段通りに過ごすことが一番だ。
と、いうわけで……
「フィー。今日はすぐに帰らず、図書室へ寄っていきませんか?」
「はい、アリー姉さま!」
いつも通りかわいい妹を愛でることにした。
本好きのフィーは、本を読むと周りが見えなくなるほど夢中になる。
じーっと本を見つめ、時折、登場人物の台詞を無意識に口にして……
うん、かわいい。
やっぱり、私の妹は天使だと思う。
そんな妹と過ごすことが私の日課だ。
いつものように図書室へ……
「クラウゼンさま」
「「はい?」」
呼びかけられて、私とフィーが同時に振り返る。
それもそうだ。
どちらもクラウゼンなのだから。
見知らぬ女子生徒が……いや。
よく見たらクラスメイトだった。
いつも本を読んでいるような、物静かな女の子だ。
言い訳になってしまうのだけど、そのせいで、すぐに思い出すことができなかった。
挨拶くらいしか言葉を交わしていないのも要因だ。
確か、名前は……
「こんにちは、ナナさん」
ナナ・シュトライゼール。
男爵家の令嬢で、一言で言うのなら子猫のような女の子だ。
とても愛らしく、かわいらしく。
見ているだけで和ませてくれる。
そんなクラスメイト。
「アリー姉さまのお友達だったんですね。はじめまして。私は、アリー姉さまの妹のシルフィーナといいます」
「シルフィーナさんですね、よろしくお願いします」
各々自己紹介をして……
それから、図書室は話をするような場所ではないので、中庭へ移動した。
中庭に設置されているベンチに座ると、ふんわりと、花壇から花の匂いが漂ってくる。
そのおかげで少し落ち着いたらしく、緊張していたナナは和らいだ表情に。
「あの……突然、すみません。クラウゼンさんにお願いしたいことがあって……」
「私に? えっと……その前に、フィーも一緒でいいでしょうか? できることなら妹に隠し事はしたくありませんし、それと、悩み事というのなら、この子の知恵が役に立つかもしれません」
「え、えと、私はそんなに大したことは……」
「大したことはありますよ。フィーのなにげない台詞で、色々とハッとさせられることがあるのですから」
「はぅ」
照れる妹、ものすごくかわいい。
語彙力が貧弱になってきた。
「はい、私は大丈夫ですよ」
「ありがとうございます、ナナさん。それで、お願いというのは?」
「お願いというか、相談というか……あの、クロムウェル先生のことなんです」