「……あら?」
気がつけば家の自室にいた。
ベッドに横になり、ぼーっと天井を見ている。
体を起こして、軽く伸びをした。
「夢……ではありませんね」
ゼノスとのやりとりをはっきりと覚えている。
あれが夢なわけがない。
夢と決めつけてしまうほど、頭に花が咲いているわけでもない。
「さて、のんびりできませんね」
なにしろ、楽しそうだからという理由で人を破滅させるような神と賭けをしたのだ。
勝者が敗者になんでも一つ命令できる。
もしも負けた場合、どんなことを命令されるか?
嫌な予感しかしない。
「絶対に勝たないといけませんね」
アリエルに教えてもらった、私の勝利条件は二つ。
ヒーローを結ばれて、メインヒロインに昇格すること。
ゼノスをなんとかすること。
後者は無理だ。
相対してわかったけど、あれは、とことん性格が歪んでいる。
矯正不可能。
助けてください、と土下座しても、笑いながら破滅を用意するだろう。
そんなヤツ。
なので、後者は自動的に消えた。
破滅を回避するには、ヒーローと結ばれるしかない。
「アレックス、ジーク、ネコ……ふむ?」
ゲームの攻略ヒーローは、隠しを入れて、全部で五人のはず。
ネコが隠しヒーローだから……
残り二人、正規ルートのヒーローがいるはずなのだけど。
「今のところ、接点がないんですよね」
確か……
残り二人のヒーローは、後輩と教師だ。
どちらも接点がないため、話をする機会がない。
「ひとまず、二人を探してみましょう」
――――――――――
翌日の放課後。
二人のヒーローを探すべく、私は校舎を歩いていた。
時々、嫌な感じの視線が飛んでくる。
ゼノスのせいだ。
あの神が面白半分でやらかしたせいで、私の評判は地に落ちた。
代わりに悪評はうなぎのぼり。
こうして歩いているだけで避けられてしまうほどだ。
「はぁ……」
悪役令嬢の宿命とはいえ、ここまで露骨に嫌がられると凹む。
転生者というだけで、元々、私は普通の人間なのだ。
メンタルが鋼鉄というわけではないし、傷つく時は傷つく。
それを表に出すのは癪なので、無表情を装っているものの……
「はぁ……」
どうしてもため息がこぼれてしまうのだった。
そのせいで前方不注意になっていた。
「うわっ!?」
「きゃっ」
ドン、と誰かとぶつかってしまう。
私はバランスを崩すだけだったけど、相手は倒れてしまったみたいだ。
「いたたた……」
「申しわけありません」
手を差し出して、そして、思わず驚いてしまう。
相手はとんでもない美少年だった。
女性と見間違うような中性的な容姿。
しかし、体はしっかりとしていて、男性らしさを感じることができる。
ただ、歳はかなり下だ。
十二くらいだろうか?
それなのに、なぜか学院の制服を着ている。
どういうことだろう?
「手をどうぞ」
「ありがとうございます」
とにかくも手を貸した。
少年は見た目通りに軽く、簡単に引き起こすことができた。
それから、改めて私は頭を下げる。
「私の不注意で、申しわけありません」
「い、いいえ! 僕こそ、ぼーっとしていたので!」
互いに謝罪をして……
「……あっ」
私の顔を見た少年は、なにかに気がついたように小さな声をあげた。
そして……
「っ……!」
親の仇というような感じで、ものすごい勢いで睨みつけてきた。
気がつけば家の自室にいた。
ベッドに横になり、ぼーっと天井を見ている。
体を起こして、軽く伸びをした。
「夢……ではありませんね」
ゼノスとのやりとりをはっきりと覚えている。
あれが夢なわけがない。
夢と決めつけてしまうほど、頭に花が咲いているわけでもない。
「さて、のんびりできませんね」
なにしろ、楽しそうだからという理由で人を破滅させるような神と賭けをしたのだ。
勝者が敗者になんでも一つ命令できる。
もしも負けた場合、どんなことを命令されるか?
嫌な予感しかしない。
「絶対に勝たないといけませんね」
アリエルに教えてもらった、私の勝利条件は二つ。
ヒーローを結ばれて、メインヒロインに昇格すること。
ゼノスをなんとかすること。
後者は無理だ。
相対してわかったけど、あれは、とことん性格が歪んでいる。
矯正不可能。
助けてください、と土下座しても、笑いながら破滅を用意するだろう。
そんなヤツ。
なので、後者は自動的に消えた。
破滅を回避するには、ヒーローと結ばれるしかない。
「アレックス、ジーク、ネコ……ふむ?」
ゲームの攻略ヒーローは、隠しを入れて、全部で五人のはず。
ネコが隠しヒーローだから……
残り二人、正規ルートのヒーローがいるはずなのだけど。
「今のところ、接点がないんですよね」
確か……
残り二人のヒーローは、後輩と教師だ。
どちらも接点がないため、話をする機会がない。
「ひとまず、二人を探してみましょう」
――――――――――
翌日の放課後。
二人のヒーローを探すべく、私は校舎を歩いていた。
時々、嫌な感じの視線が飛んでくる。
ゼノスのせいだ。
あの神が面白半分でやらかしたせいで、私の評判は地に落ちた。
代わりに悪評はうなぎのぼり。
こうして歩いているだけで避けられてしまうほどだ。
「はぁ……」
悪役令嬢の宿命とはいえ、ここまで露骨に嫌がられると凹む。
転生者というだけで、元々、私は普通の人間なのだ。
メンタルが鋼鉄というわけではないし、傷つく時は傷つく。
それを表に出すのは癪なので、無表情を装っているものの……
「はぁ……」
どうしてもため息がこぼれてしまうのだった。
そのせいで前方不注意になっていた。
「うわっ!?」
「きゃっ」
ドン、と誰かとぶつかってしまう。
私はバランスを崩すだけだったけど、相手は倒れてしまったみたいだ。
「いたたた……」
「申しわけありません」
手を差し出して、そして、思わず驚いてしまう。
相手はとんでもない美少年だった。
女性と見間違うような中性的な容姿。
しかし、体はしっかりとしていて、男性らしさを感じることができる。
ただ、歳はかなり下だ。
十二くらいだろうか?
それなのに、なぜか学院の制服を着ている。
どういうことだろう?
「手をどうぞ」
「ありがとうございます」
とにかくも手を貸した。
少年は見た目通りに軽く、簡単に引き起こすことができた。
それから、改めて私は頭を下げる。
「私の不注意で、申しわけありません」
「い、いいえ! 僕こそ、ぼーっとしていたので!」
互いに謝罪をして……
「……あっ」
私の顔を見た少年は、なにかに気がついたように小さな声をあげた。
そして……
「っ……!」
親の仇というような感じで、ものすごい勢いで睨みつけてきた。