「……感謝される覚えはありませんが」
「私には覚えがあるので遠慮なく感謝されていてください!」
「意味がわかりませんね」


 そう言うものの、言葉に反して彼の表情はどこか優しい。
 なおも恋幸がにこにこと脳天気な笑顔を向ければ、裕一郎は一つ息を吐き駐車場を指差した。


「……出かけるんでしょう? 無駄に時間を潰していないでさっさと行きますよ」
「はいっ!!」


 このわずか5分後……彼女は、軽率に頷いたこの時の自分を恨むことになる。