恋幸の言葉を聞き、温度の感じられなかった裕一郎の表情が変化した。

 不愉快そうにしかめられた顔を見て恋幸はもう一度謝罪を口にしかけたが、それを彼の低音が制してしまう。


「どういう意味です? 何か大きな誤解をしているようなので言っておきますが、私は『日向ぼっ子』という作家の書く話が好きなだけであって、その中身がどういう人間であろうと作品への評価は変わりません」
(一人称“私”なのかな……? 素敵……)


 違う方向で勝手に心をときめかせる恋幸だが、そう語る裕一郎は真剣そのものだ。