眼鏡のふちを長い指でくいと持ち上げながら訝しげに恋幸を見る男性の瞳は、アクアマリンで作られているのだろうかと錯覚するほど美しい空色。
 いわゆる『イケメン』に部類される整った顔立ちに加えて黒髪が白い肌に映えており、薄い唇が開かれると先ほど耳にした心地よい低音が言葉を紡ぎ落す……のだが、肝心の内容は全て恋幸に届くことなく右から左へ流れていく。

 なぜなら彼女は今、雷に打たれたような衝撃を受けているからだ。


(あっ、あ……ま、間違いない……っ! 彼は、)


 その理由は語ると少しだけ長くな


「け……」
「……? け?」
「結婚してください……」
「……はい?」
「……、……あっ!?」


 ……そして冒頭へ戻る。