俯かせていた顔を上げると、空色の瞳に自身の姿が映る。
 いつの間にか彼女のそばにいた裕一郎の表情は相変わらず無機質だが、どこか心配そうな声音が言葉を紡ぎ落とした。


「……? 何かありました?」
「……えっ? あっ、い、いえ……!! なんでもないです……!!」


 裕一郎様はどこまでも優しい。きっと彼の恋人も、こういうところを好きになったのだろう。
 二人の仲を、幸せを、部外者がこれ以上邪魔してはいけない。明日からはもう、彼と会うのはやめにしよう。
 だから今日をめいいっぱい楽しんで、良い思い出を持って帰ろう。