恋幸はつい動きを止めてしまっていたのだが、隣から聞こえた椅子を引く音で我に返り、勢い良くそちらに目をやった。


「――!!」


 それが全ての始まりであり、同時に終わりでもある。


「ブレンドコーヒーですね、かしこまりました。少々お待ちください」
「はい」
(な……なな、なんっ……な……っ!!)


 ナンの話しかできなくなった恋幸の目は、右隣の人物に釘付けであった。


「……? あの、何か御用ですか?」