(裕一郎様、裕一郎……)


 そして目にする。


「あっ……!! くら、も……」


 スマートフォンの画面を見つめて、口元に緩やかな弧を描く裕一郎の姿を。


(わら、って……)


 通常であれば「一人で携帯の画面を見てニヤニヤするなんて」と引いてしまう場面であるが、相手は“あの”裕一郎である。

 彼の表情は滅多に変化を見せない。
 それを画面越しで容易に“変えてしまえる”相手など、想像に(かた)くなかった。