「うちに迎えたのは3年ほど前で……ああ、いえ。それはまた機会があればお話するとして……今日の要件はなんですか?」


 彼が目線を向けると、恋幸は途端に唇をきゅっと閉じて再び俯いてしまった。

 次の言葉を待つ裕一郎がお冷を持ち上げた時、氷のぶつかり合う音に紛れて鼓膜をノックする小さな声。


「……た、……に、……かけ……て、」
「……?」


 首を傾げる彼の瞳に、真っ赤な顔で言葉を紡ぐ恋幸の姿が映った。
 色素の薄いブラウンのビー玉には涙が滲み、いわゆる『上目遣い』の効果を体験した裕一郎は心の中で(なるほど?)と呟く。