「えっ……? でも、あれ……?」
「ですが、全てを疑っているわけではありませんし、特別マイナスな感情を抱いたわけでもありません。貴女の言葉を借りるのであれば『引いていない』ということです」


 その返答を聞き、恋幸はへらりと笑って「よかったです」と胸を撫で下ろす。


「……繋ぎ止めておけるのなら、理由なんて何でも構いませんよ」
「……え? 今、なにか言いました?」
「いいえ、何も?」
「……? そうですか?」
「はい、そうです」


 たしかに裕一郎の薄い唇が上下し、低くて心地良い声がかすかに耳を撫でた気がするのに……。