いったんセーブ地点まで戻ってやり直そうにも、残念ながらこの世界は『ゲーム』ではない。残酷で美しい現実だ。


「……」


 唇を引き結んで俯いたまま、この状況を打破するための作戦はないものかと思考をフル回転させていた恋幸だったが、お冷の氷が溶けてカランと軽快な音を立てると同時に一つ決意の息を吐く。

 彼女の心にあったのは、「悪意を持って愛しい人を(あざむ)くような真似だけはしたくない」。ただそれだけだった。


「……あの……少し、聞いてほしい話があります」
「……はい」