(歯止め、って)


 彼からの口づけを大人しく受け入れながら、恋幸はどこか冷静さの残る脳みその(すみ)で言葉の意味を考える。

 いったん顔を離した裕一郎は、そんな彼女の様子を見てわずかに眉根を寄せると、人差し指の先で恋幸の前髪をかき分けて「ふ」と息を吐いた。


「……抵抗、しなくていいんですか?」


 そしてひどく(おだ)やかな音で言葉を(つむ)ぎ落とすと、眼鏡の奥にある空色の瞳を困ったように細めて恋幸の頬に手のひらを添える。