「……」
「!!」


 しかしそんな彼女の心情を知ってか知らずか、裕一郎は大きな手で彼女の頭を優しく撫でると、ひどく(おだ)やかな声で「どうぞ、座ってください」と言って後ろ手に扉を閉め、口の端をほんの少しだけ持ち上げて見せる。

 そのおかげで一時的に緊張のほぐれた恋幸は、彼の言葉に甘えてそろそろと移動して応接ソファに腰を下ろした。


「わっ!?」


 ……のだが。
 ウレタン素材の“それ”は彼女が思っていたよりも柔らかく、想像以上に体が深く沈み込んだことで足が地面から離れてしまう。