(裕一郎様……!!)
「小日向さん?」


 小走りで彼女に駆け寄った裕一郎は、少し驚いたように眼鏡の奥にある青い瞳を丸め、胸元で揺れる社員証を片手で押さえた。


「きゅ、急に来て、あっ、お仕事中にすみません……!!」
「いえ、それは貴女なので構いませんが……どうしたんですか?」


 さらりと落とされた甘い言葉に、恋幸は胸がきゅんと音を立てたような錯覚をおぼえる。

 しかしそれも数秒で、直後に目に入った社員証の文字が一気に彼女を現実へ引きずり戻した。