「あ、あの……ここは……?」
「裕一郎様のお勤め先です」


 目的が見えず不安に駆られていたが、「ふふ」と笑う星川を見て恋幸はようやく「ああ、なるほど!」と胸を撫で下ろした。


「中に入ったら真正面に受付がありますので、そこで『倉本に忘れ物を届けに来ました』と伝えてください」
「え? 星川さんは、」
「ここで待っています。だって、私が行くよりも小日向様が行かれた方が絶対に喜ばれますから!」


 そう言われてしまったら気分が良くなるのは当然である。