「あっ! 星川さんおはようございます! あの、これ……っ!!」


 いったん体の向きを変え、まるで割れ物でも扱うかのように恋幸が“それ”を両の(てのひら)にのせてから星川の方を再び振り返れば、彼女は「あら」と言って後ろ手に襖を閉めた。


「裕一郎様ったら、忘れるなんて珍しい……」


 星川が視線を向ける先――恋幸が手に持っているのは、裕一郎のスマートフォンである。
 日頃、彼は恋幸と同じ空間にいる間、彼女の目の前でスマートフォンを触る事がほとんど無かったため、見覚えのない“それ”を認識するのに時間がかかってしまったのだ。


「ど、どうしましょう?!」