息をするかの(ごと)く自然に甘い言葉を落とされると、恋幸は今だにどう反応するのが正解か分からずにいた。
 ただ一つ確かなことは、狼狽(うろた)える自身を観察する裕一郎がひどく愛おしそうな顔をしているということ。

 はっきりと表情を変化させて見せるわけではないが、彼の些細な感情の変化を恋幸は少しずつ感じ取ることができるようになっていた。


「……正直に言うと、貴女だけでも良くしてあげたいと思っているのですが、」
「良く……?」
「残念ながら明日も仕事があるので、叶いそうにありません」
「?」


 ――……良くしてあげたい。