つい先ほどまで不安げな表情を浮かべていた恋幸だが、今度は額から顎の先まで熟れた林檎のように赤く染め、唇をきゅっと閉じたまま瞼を伏せて返す言葉を探す。

 裕一郎は彼女に気づかれないように小さく笑うと、自身の服を摘んだままの彼女の手にそっと触れた。


「罪悪感にはもうつけ込みましたよ」
「え……? どういう事ですか?」
「さあ? どういう事でしょう?」


 恋幸は閉じたばかりの瞼を慌てて持ち上げて問いを投げたが、質問を質問で返されてしまい、彼の空色の瞳はただ優しい色を(にじ)ませて意味ありげに細められる。


「……?」
「分からないままでいいですよ、可愛らしいので」
「かわ……っ!?」