「……調子に乗りました、すみません」
「……? どうして謝るんですか? 私、」


 珍しく困ったような顔をする裕一郎を(あお)ぎ見ながら、彼女は首をわずかに傾けて彼の服を指先で軽く摘む。


「私……もっと、触ってほしいって思っちゃいました」
「……」


 その言葉を聞いて、裕一郎の喉仏が大きく上下する。

 生唾を飲むとはまさにこの事である、と他人事のように考えながらなんとか理性を保っている彼を知ってか知らずか……恐らくは後者だが、色素の薄いブラウンの瞳に涙の膜を貼り、恋幸は再び口を開いた。