「……ん、っん……ふっ、」


 今――彼女は裕一郎の手で後頭部を固定されているわけでもなく、無理矢理に口内の愛撫(あいぶ)を受け入れなければならない理由は一つもない。

 それでも無意識下で「もっと」と求めて(みずか)ら顔を寄せてしまうのは、前世云々を後付けの言い訳にしてしまえるほどに『裕一郎(こいびと)』との深い繋がりを望む恋幸の心の現れだった。

 そして勿論“それ”は彼女の態度から裕一郎へ伝わっており、彼は深く口付けたまま目元に緩やかな弧を描く。


(なんだろ……なんか、変な感じがする)