「っふ……っ、」
「ん……」


 静まり返った室内で、互いから発せられる水音だけがやけに大きく響く。
 舌を伝って混ざり合う熱に思考が(おか)され、恋幸は脳が痺れるような感覚に襲われていた。


「は、っふ……んんっ、」


 意識していなくても、少しだけ開いた唇の隙間から勝手に可笑(おか)しな声が漏れてしまう。

 だというのに……(まぶた)を薄く持ち上げれば、目の前にある裕一郎の整った顔は“こんな時”にも()いだ水面のように落ち着いた表情を浮かべており、急激に沸騰した羞恥心から恋幸は再びかたく目を閉じて彼に体を委ねた。