「……はい。大好きな倉本さんになら、何されてもいいです」
「……『殺し文句』なんて言葉じゃ足りませんね、それ」


 裕一郎が顔を近づけると、恋幸は誰に教わったわけでもないというのに(まぶた)を伏せて口を閉じた。
 ゆっくりと重なる唇の感触が心地良くて、時間が経つのを忘れてしまいそうになる。


「小日向さん、少し口を開けてください」
「は、」


 返事をするために開いたはずの口が、自分とは違う熱に(おか)される。
 彼の左胸に添えていた手で服をぎゅっと握り、恋幸は頭の隅で必死に息継ぎの仕方を思い出していた。