「倉本さんは、私のことを過大評価しすぎです」
「……過大?」


 納得がいかないようなトーンで落とされた言葉に対して彼女が何度も頷けば、裕一郎の右手がゆっくり移動して恋幸の顎を優しく持ち上げた。
 冷たい指先が輪郭をなぞり、無意識に体が強張(こわば)る。


「……悪意のある嘘をつかず、反応も素直で、いつも私の事ばかり優先して、」


 言いながら、裕一郎は彼女の耳たぶに口をつけて、右手の親指で唇に触れた。