「……小日向さん、」
「はい!」
「そうではなくて、ここに」
「!!」


 骨ばった大きな手が、もう一度足を叩いて見せた。
 今度こそはさすがの恋幸も“それ”の意味を正確に理解し、おずおずと上半身を持ち上げて、心なしか震える声で「失礼します」と呟き言われた通りに移動する。

 彼に背を向ける体勢でその足の上に座ると、裕一郎は「ふ」と小さく息を吐いておもむろに彼女を抱きしめた。


「貴女は相変わらず可愛いですね」


 肩に顎をのせつつそう呟いた彼の左腕にそっと触れて、恋幸は小さくかぶりを振る。