(だめだめ! イイオンナは淫らな想像なんかしない……!!)


 裕一郎は、恋幸が一人で悶々(もんもん)としている事に当然勘づいていたのだが、その様子を心の中でひっそり楽しんでいるなどと彼女は想像すらしていなかった。





「小日向さん」
「――!? は、はいっ!!」


 それから、特筆すべき何かが起きる事もないままに午後10時を迎える。
 歯磨きを終えた恋幸が廊下を歩いていると、その背中を心地の良い低音が呼び止めた。