「きっ……!? な、なんで、」
「なんで? 貴女が可愛らしかったので、キスしたいと思いました。ですが、無理強いするつもりは」
「無理強いどころかとびきりのご褒美です!!」


 恋幸が必死になって反論すると、裕一郎は口の端をほんの少しだけ持ち上げて、眼鏡の奥にある空色の瞳に優しい色を(にじ)ませた。


「それは良かった」
「こ、こちらこそ……?」
「……では、」


 そこで言葉を切った裕一郎が、恋幸の頬に触れていた手を移動させてそっと顎を持ち上げる。