もし、もしも。彼に同じ事をされたら? 心当たり無く、急に目を合わせてもらえないようになったら?
 ほんの数秒想像しただけで、恋幸の心は張り裂けそうだった。


「……ごめんなさい……」


 そして、気がつけば謝罪が唇をすり抜けて、目尻にじわりと涙が浮かぶ。

 しかし間違ってもここで自分が泣き出してはならない・そんなことは今するべきではないとすぐさま判断を(くだ)した彼女は、むんと気張って唇にありったけの力を込めた。


「どう、しました……?」


 突然フライ返し片手に百面相を始められ、さすがの裕一郎も戸惑いを隠しきれない。