普段の無表情はどこへやら……裕一郎は困ったように眉を下げ、口の端を少しだけ引いて彼女の頬をそっと撫でる。
 その様子から、彼の心情を察することはあまりにも容易(ようい)なことだった。


「……っ、くらも、と、さん」


 早く事情を説明して謝罪しなければならない。そう思うほどに、罪悪感が喉を詰まらせる。
 今日初めて交わった目線の先にある空色の瞳が、恋幸の声に呼応(こおう)してわずかに揺らぎ、(まぶ)しそうに細められた。


「よかった……やっと、貴女の顔を見ることができました」
「やっと、って……えへ……あれからまだ、4時間くらいしか経ってませんよ」