しかし、時が経つほど罪悪感は増すばかり。恋幸は、肝心な時に限って積極性を欠く自分自身がひどく嫌になる。


「はぁ……」


 いつもなら、こんな時は執筆作業に集中して気を(まぎ)らわせるのだが、今回ばかりはどうにも裕一郎の事が気になって仕方なかった。

 夢の中で自身を翻弄(ほんろう)した彼と、現実に居る愛おしい彼。その2人が『似て非なる者』だと理解できているのは恋幸の“心”だけで、単純な脳みそは夢で見た光景を何度も再生し、恥ずかしさで彼女の精神を掻き乱す。


「……裕一郎様、怒ってるかな……」
「小日向さん」