だというのに彼は初めから、絡まった毛糸を(ほど)いていくかのように少しずつ丁寧に、彼女の気持ちが追いつくペースで行為を進めてくれていた。
 自身を包むその大きな優しさに恋幸はもちろん早くから気づいており、込み上げる愛おしさで胸が締め付けられて仕方がない。


「大丈夫ですから、裕一郎様」
「うん?」
「も、っと……もっと、触ってください」
「……(おお)せのままに」


 涙で(うる)む彼女の瞳に映され、裕一郎は視界がぐらりと揺れる感覚に襲われた。

 鼻腔(びくう)をくすぐる香りも、脳を揺らす声も、綺麗な二つのビー玉も。全てが理性を溶かす麻薬のようだ。
 そんな風に考えているのは、どちらだろうか?