「……? 何でもないのならそれで良いのですが」
「は、はいっ! なんでもにゃっ、ない! ですっ!!」
「そうですか」
声が裏返っていることや噛んだことについては一切触れず、『彼』は恋幸の向かい側に座りビジネスバッグをわきに置いてからおしぼりで手を拭く。
一連の何でもない仕草ですら彼女をときめかせるには十分すぎたらしく、その瞳は釘付けになっていた。
「……なにか?」
「あっ、いえ! ただ……」
「ただ?」
「は、はいっ! なんでもにゃっ、ない! ですっ!!」
「そうですか」
声が裏返っていることや噛んだことについては一切触れず、『彼』は恋幸の向かい側に座りビジネスバッグをわきに置いてからおしぼりで手を拭く。
一連の何でもない仕草ですら彼女をときめかせるには十分すぎたらしく、その瞳は釘付けになっていた。
「……なにか?」
「あっ、いえ! ただ……」
「ただ?」