「~~っ、あの……もう一つ、わがままを聞いてほしいです」
「なんですか?」


 恋幸は頬に熱が集まるのを感じながら、緊張でわずかに震える唇をゆっくりと持ち上げる。


「……キス、してもいいですか?」


 彼女の言葉を受けて、裕一郎は驚いたように目を丸めたままぴたりと身動きを止めたものの、数秒の間を置いて喉の奥で小さく笑うと大きな手で恋幸の頭を撫でた。


「ずいぶん可愛い“わがまま”ですね」
「だ、駄目ですか……?」
「駄目です。なんて、言うと思いますか?」