「この前……倉本様が『まだ手は出さない』って言ったの。私には魅力がないのかなと不安になっていたんですけど、未成年だと思っていたからなんだなって考えたら少し安心しました」


 ストレートすぎる恋幸の言葉に対して裕一郎は何も返さず、訪れた静寂が少しのあいだ二人を包み込んだ。
 彼女はそこでようやく自身の発言が持つ意味に気づき何とかしてこの空気を誤魔化すためのセリフを探すが、こんな時に限って前頭葉(ぜんとうよう)がまともに機能しない。


「……貴女が、誰にでもそんなことを言う人間ではないと理解しています。でも、」


 いったん唇を引き結んだ裕一郎は、目線を恋幸に移動させてからおもむろに片手を伸ばして赤く染まった彼女の頬にそっと触れた。