「代金?」


 それがどうかしましたかと彼女が問うより先に、胸ポケットから財布を取り出す裕一郎。
 恋幸は慌ててその手を掴んで「倉本様が払う必要はないですよ!」と引き止めるが、彼はなぜか不思議そうに目を丸めて薄い唇を持ち上げた。


「そういう訳にはいかないでしょう。貴女が『日向ぼっ子』であるかどうかに関わらず、未成年に夕飯代を出させるのは気が引けます」
「え?」
「うん?」


 今、空耳や聞き間違いでなければ裕一郎の口から“信じたくない”ワードが落ちたような。