「これ、どーぞ! 俺の連絡先が載ってるんで、何かあったらいつでも連絡してください! 主に倉本さんに関する相談とか!」
「あっ、ありがとうございます……! すみません私、いま名刺持ってなくて、」
「いーっす、いーっす! これ以上倉本さんにヤキモチ妬かせたらマズイんで!」
(ヤキモチ……?)


 いつも落ち着いていて心に余裕を持った大人の男性である(と、恋幸が思い込んでいる)裕一郎がまさか、秘書の方と少し親しくしただけで嫉妬するわけがない。

 そんな考えと共に彼女が目線を移動させた先にあったのは、綺麗な眉を八の字にして唇を引き結ぶ裕一郎の姿だった。
 しかしそんな表情も恋幸の視線に気づくと同時に消えてしまい、わずかに首を傾げる彼の様子からは『わざと不機嫌を表に出していた』とは考えづらい。

 つまり、