早く否定しなければ誤解を与えてしまう。
 そんな焦燥感(しょうそうかん)に駆られる彼女の思考力を奪ったのは、


「彼女……に、なって頂けるよう、今必死にアプローチしているところですよ」


 ――……裕一郎の言葉だった。


「!?」
「うわー、ガチのやつきた」
「聞いたのは貴方でしょう」
「ま、そうっすけどー。まさか社長から惚気(のろ)けられる日が来るとは思わないじゃないっすかー」


 たしかに以前、彼から直接「好きです」と言われたことはある。