あれから約3分歩いて辿り着いたのは、絢爛豪華(けんらんごうか)な高級レストラン……ではなく、ごくごく普通のコンビニエンスストアだった。
 店の目の前にある歩行者用信号機が青色になるのを待っている間にどちらからともなく繋いでいた手を離し、当たり障りのない会話をしながら横断歩道を渡って自動ドアをくぐる。


「私も近所のコンビニにはよく行くんですけど、倉本様も利用されるんですね……!」


 いったい彼を何だと思っているのだろうかという話はさておき、裕一郎は入ってすぐの場所に積まれていたカゴを1つ手に取り、通路の端に少しよけてから振り返って恋幸を見据えた。


「はい。家を出る前に言った通り、八重子さんが休みの日はここで弁当を買ったり、帰りが遅くなった時はインスタントラーメンで済ませる時もあります」
「倉本様もインスタントラーメン食べたりするんだ……」
「……? 食べたりしますよ」