その言葉を聞いて裕一郎は少しのあいだ無言で瞬きを繰り返してから、自由な方の手を恋幸の背中に回してそっと抱き寄せた。
 そして、驚きから間抜けな声を出す彼女の頭に口付けを一つ落とすと、


「貴女のそういうところが本当に、」


 いったんそこで言葉を切って、恋幸から体を離し姿勢を正す。


(……? 本当に、何だろう……?)
「……足元に気をつけてくださいね」
「は、はいっ!」
「……手、繋ぎます?」
「ぜひ繋ぎたいです……」


 彼女の返しに裕一郎は息を吐くように小さく笑って右手を差し出し、恋幸が左手で躊躇(ためら)いがちに握ったのを確認してからその左側に立って足を進め始めた。
 今夜は2人の頭上でオリオン座が綺麗に輝いている。