気がつくと、そこは朝だった……というネタはさておき、恋幸は意識が覚醒した瞬間に全身の血の気が引く。
 隣に目をやるとそこにはすでに裕一郎の姿どころか布団の一枚すら無くなっており、彼女は弾かれたように体を起こして部屋を飛び出した。

 そして運良く迷わずに辿り着いた玄関先で彼の姿を見つけ、今にも出て行ってしまいそうなその背中を慌てて呼び止める。


「倉本様……っ!!」
「……! おはようございます」


 振り返った際にほんの一瞬だけ驚いた顔をした裕一郎だったが、恋幸を視認すると同時にいつもの無表情へ戻ってしまった。


「おはようございます! あ、あの、私……昨日の夜、すごく眠たくて途中から何も覚えてないんですけど、何か倉本様におかしなことを言ったりしたりしませんでしたか……!?」
「……」